地域おこし協力隊は、地域創生、地域共創、地域活性化のために必要な制度。くま吉の移住してきた地域も、少子高齢化、空き家、空き店舗、後継者不足、廃業…さまざまな課題を抱えている。地方の地域を盛り上げるためには、住む人、暮らす人たちが自発的に何かを求めていく必要がある。そして求めるものに応えられる人がそこに入り込んでいくこと。地元の人と外の人がうまく手を取り合えるようになれば、おもしろい。
こんにちは。くま吉(@ijuu_navi)です。今回は、地域課題の解決に取り組む地域おこし協力隊の任期終了(最長3年)後に着目していきます。
今回の内容
地域おこし協力隊の任期終了後はどうなるのか。
地域おこし協力隊の任期終了後は大きく3つのパターンに分かれます。
任期終了後の3つのパターン
- その地域に残り、起業をする人(事業継承をする人も含む)
- その地域に残り、その地域の企業に就職する人
- その地域に残らない人(その地域に残れない人)
パターン1,2であれば、地域おこし協力隊の制度の目的を達成する形と言えますが、パターン3は目的未達成となります。
地域おこし協力隊からの起業 退任後のヴィジョン
今回はパターン1の「その地域に残り、起業をする人=地域おこし協力隊からの起業」に着目し、紹介していきます。
はじめに、地域おこし協力隊になる最初の入り口の時点で、退任後のヴィジョンを描けているかが重要です。そして、やろうとしていることを地域が求めているかが重要です。これによって、任期の3年間の過ごし方や充実度はいろいろ変わってきますのでヴィジョンを描くことはとても大切です。
わかりやすい例をあげてみます。
地域おこし協力隊を始める時点で「3年後に美味しいスイーツを提供するカフェを個人事業主として経営したい」という目標があれば、起業をするには何が必要か、法人?個人事業主?店舗は?営業許可は?個人事業主としてやっていくために何をする必要があるかを調べて動き出せます。3年間を計画的に過ごすことができ、スムーズに自分の事業を始められる可能性が高いでしょう。
カフェに関して、全くの未経験者だったとしても、 地域おこし協力隊の「活動費」のなかで、「研修費」を活用してスイーツづくりの勉強や、コーヒーの勉強に時間と費用を充てたり、創業に関するセミナーに参加したりして3年かけて「必要な準備」を進めることができ起業につなげることができます。場合によっては、3年待たずに起業して、地域おこし協力隊と並行して事業を進めることも出来ます。
そして、カフェオープンが地域の人の長年の願望「住民の憩いの場所づくり」だと、たくさんの人に応援してもらえることとなります。
これはイメージしやすい例として挙げました。このように「カフェ起業」が地域に求められていればいいですが、求められていなければこの例の通りにはいかないかもしれません。
「地域おこし協力隊からの起業」は、隊員のやりたいことと自治体や地域が求めることとのマッチングが極めて重要となります。
逆に、3年後のことはわからない。決めていないという状態だとどうなるか。
それは1年後も2年後も何をやりたいかわからずに、ただ目の前の業務をこなすだけの日々になってしまう可能性があります。3年目になって、あと1年しかない状態から焦って準備を進めようとしても、進められない可能性や手遅れの可能性もあります。
仮に最初の時点で「何をやる」か明確に決まっていなくても、例えば最初の1年間は「地域のために」なることをひたすらやってその中で退任後のやること、やりたいことを見つける。自分自身で、期限設定をしておき、それに向けて行動する。それを自治体側に伝えておくことも重要です。
ヴィジョンがなく、与えられた業務をこなすだけでは成功は手に入れられないでしょう。ヴィジョン設定が大切なのはこのような理由からです。
起業するにはどうすればいいか。
地域おこし協力隊になって、口を開けて待っていても起業の方法を教えてくれる人はいません。情報は自分でつかみに行きましょう。ここでは基本中の基本をお伝えします。
起業には、個人事業主と法人設立の2つのパターンがあります。
個人事業主:法人を設立せずに個人で事業を営む人のことで、税務署に開業届を提出し、事業の開始を申請することでなることができます。法人のような定款作成や登記手続きなどは不要です。
法人:株主などの出資者が出資をして設立します。出資者は本人だけでも可能です。定款を作成し、公証人役場で承認してもらい、法務局で法人登記をする必要があります。それに伴い設立費用が30万円程度かかります。
法人といっても株式会社、合同会社、NPO法人などいくつか種類があります。詳しくはくま吉も利用している freeeややマネーフォワードで詳しく解説していますので、そちらでご確認ください。
利用料金無料!3ステップで簡単に会社設立 マネーフォワード 会社設立免許取得や許認可申請
例えば、飲食店をやりたい場合などは開業した後に最寄りの保健所にて、飲食店営業届の提出と許可が必要になります。事業内容によって、免許や各種許認可が必要、時間を要する場合があるので情報収集をしっかりと行いましょう。
くま吉の場合は、やりたいことがたくさんあったので、飲食店営業・そうざい製造業・菓子製造業の営業許可を保健所で取得、酒販免許を税務署で取得したよ。(現役後に取得したものもあるよ)
自分のやりたいことをやるために許認可・届け出が必要かどうかは厚生労働省のホームページを確認してみるといいね。
営業規制(営業許可、営業届出)に関する情報|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
地域おこし協力隊の活動費の有効活用
地域おこし協力隊の隊員は「活動費」の中で「研修費」を与えられています。これを有効に活用しましょう。研修費を使えば、さまざまなスキルアップや起業に向けた行動を進められます。
各種研修の受講
- 自分の興味のある分野や専門家のセミナー・講習への積極的な参加
- 資格取得に向けたセミナー・講習への参加
- 必要な許認可申請のための研修受講
起業・創業セミナー
例えば、商工会議所などで開催される。半年~1年のプログラム。創業予定者や創業して間もない方などを対象に、「創業の心構え」や「経営とは何か」など創業の本質に加え、「財務」「販路開拓」「人材育成」に関する知識や具体的なビジネスプラン策定により経営に必要なスキルの習得を目指す内容。様々な支援策や小規模事業者持続化補助金の創業特例を受けられるようになるなど特典もある。
このとき重要になってくるのが、「地域おこし協力隊の研修費」がいくらで予算計上されているか。
隊員1年目の場合、前年度末3月議会で当該年度の予算が決まるため、その中で研修費の金額も決められている。これが自分の受講したいと考えている研修にかかる費用を払える金額であれば問題ないが、超える場合に自治体として支払えない、場合によっては自腹で行く、あるいは翌年に行くということも出てくる。
勘のいい役場担当者の場合、今挙げたようなセミナーや資格取得に必要な経費がいくらかを概ね把握して予算に挙げている。勘が悪いと、最悪の場合0円という場合も…
ここでのポイントは、自分が行きたいという研修や、取りたいと思う資格にかかる費用をあらかじめ計算しておき、役場の担当者に報告して、予算案に組み込んでもらうということ。(タイミングとしては、1年目の10月くらい。予算案作成時期(12月)より前)
計画的な準備、行動が大切ということです。
すべて自腹でやるというのもありですが、地域おこし協力隊として「研修費」をつかう権利を持っているので有効活用しましょう。
通常の業務との両立
くま吉が現役隊員のときは、通常業務(8:30出勤17:15退勤)を行いながら業務時間外で「起業に向けた準備」を進めました。
起業型地域おこし協力隊 という起業に特化した協力隊の制度も生まれています。
起業型地域おこし協力隊とは、地域おこし協力隊の制度のひとつ。地域課題を自らのアイデアで解決し、活性化につなげるような事業づくり、地域での新たなビジネスの創出を目的とした協力隊の制度。ほとんどの場合、自治体との雇用関係はなく、委託契約型か個人事業主として自治体と関わるケースが多い。副業や働き方の自由度が高いのが特徴。
冒頭で例に挙げた「カフェ起業」であれば、起業型地域おこし協力隊にぴったりはまるように思います。
一方で、一般型の地域おこし協力隊の大半は自治体との雇用関係がある。観光振興や特産品開発、ふるさと納税業務への従事で、自治体に課せられた業務(ミッション)に取り組むのが一般的で、市役所職員の基本ルールの下で働きます。
くま吉の場合、通常業務(8:30出勤17:15退勤)をこなしながら、業務時間外で起業の準備を進め、3年目に入ってすぐに会社を設立したよ。
くま吉ができたように、地域おこし協力隊でも起業へつなげることは可能です。
通常の地域おこし協力隊でも起業へつなげることは可能です。
どちらがいいのか気になるので、一般型の地域おこし協力隊と起業型の地域おこし協力隊のメリットデメリットを見ていきましょう
一般型と起業型の地域おこし協力隊のメリット・デメリット
一般型の地域おこし協力隊の場合(くま吉)
メリット
- 一職員という立場がしっかり確保されているため、地域の人からの信頼を得やすい
- そのため地域にしっかり根を張りながら地域課題を解決していきやすい
- 地域課題の解決から、事業化へと結びつけることも可能
- 地域を選びやすい
デメリット
- 起業に対する自治体の理解を得るのに時間を要する
- 通常業務と起業して進めたい事業内容とが全然異なる場合がある
起業型地域おこし協力隊の場合
メリット
- 入る時点で自治体と隊員が「起業」を意識して臨める
- 自由度が高い働き方ができる
デメリット
- 募集している自治体が少ないので、必然的に起業する場所の選択肢が限定される
- 地域課題の解決とやりたいことのミスマッチが起こる可能性がある
以上のように、それぞれのメリットとデメリットがありますが、地域特性や役場の考え方など条件が異なるので、結局どうすればいいかは本人次第と言わざるを得ません。
最終的には「自分がどこで、何をしたいか」です。場所にこだわらずサポートを受けられればいいと考えるか、まずは場所を優先して自分でいろいろ情報を収集しながら通常業務との両立を図るか。
どちらも間違いではありません。自分に合った道がどちらなのか、どのような選択をすれば自分の理想の暮らしや人生を送れるか。そのうえで判断をして決めていけばいいでしょう。
地域おこし協力隊は、あくまでも通過点。でもその通過点をどうするかがとても大切だよね。地域と自分にとって、最もいい形で過ごせることがその後につながっていく。そんな未来を描いていきたいね。